トラクション・ソフトウェア・インクのリモートワーク環境
トラクション・ソフトウェア・インクは、米国の「Traction Software, Inc.」の日本支店です。代表を務める私、奥津の仕事は、主に日本国内の販売やお客様へのサポート提供等ですが、米国本社の業務にもコミットしています。日本からリモートワークしている感覚です。米国のメンバーも、東海岸、西海岸、そしてドイツに分かれています。
そんな私たちがチームとして仕事ができるのは、リモートワークができる環境があるからこそです。そこで、今回は、そんな弊社のリモートワークについて紹介します。
リモートでの基本的な働き方
日本でもリモートワークが新しい働き方として注目を集めるようになりましたが、冒頭に書いたように、私たちのチームではメンバーが世界各地に住んでいるので、リモートワークで繋がることが当然のものと考えられています。
リモートワークが当然なので、事前申請などは必要ありません。働く時間帯も場所も、基本的に各メンバーの裁量に任されています。朝型人間は未明から働いていますし、夜型人間は夜遅くに働いています。
日本支店での代表として営業時間中はいつでも顧客対応できるようにしておく必要があるため、基本的にいわゆる「9時5時」をコアタイムにしています。場所も自宅オフィスが中心です。
よって、皆さんが思い浮かべるであろう「時間は自由、場所はスタバ」のような、モデルケース的リモートワーク環境とはちょっと違うかもしれません。インターナショナルなチームの一員でありつつ、地方の支店に勤務しているイメージに近いと思います。
「9時5時がコアタイム」と書きましたが、必要に応じて時間を変更することもあります。例えば、子供を夕方から病院に連れて行かねばならないような場合です。「その分を別の時間で働かなければならない」という決まりはありませんが、私は前倒しして未明から仕事を始めることが多いです。
下記のライフハッカーに掲載されている、Automattic社で働く高野直子さんのケースは、日本在住スタッフが一人だけという点でも、私たちのチームの環境とよく似ています。
すべての社員がリモートワークの「WordPress.com」運営会社・Automattic社って? 唯一の日本在住スタッフ、高野直子さんに話を聞いた
ライフハッカー[日本版]では新しい働き方の1つとして、「リモートワーク(在宅勤務)」についてこれまで何度か取り上げてきましたが、日本ではいまだほとんど浸透していないように思います。そこで今回は、日本国内でリモートワークを実践している「WordPress.com」の運営会社・Automattic社で働く高野直子さんにインタビューしました。 | ライフハッカー[日本版]
http://www.lifehacker.jp/2015/09/150918takano_wordpress.html
リモートワークに必要な信頼感と誠実さ
このような自由な働き方を人に話すと、多くの方は驚き、「チームとして成り立つのか?」とか「仕事をサボる人もいるんじゃないの?」などと聞かれます。私も働き始めた当初は「こんな自由な働き方で良いのか?」と驚きましたが、その後、すぐに分かりました。
みんな、仕事が好きで、誇りを持っていて、誰もサボらない!
お互いにサボっているか疑うような希薄な信頼感の上にはリモートワークは成り立たないと思います。何故なら、離れている以上、完全な「管理」はできないからです。また、逆に、相手の信頼を裏切らない誠実さが求められます。
後述しますが、私たちは「TeamPage」でお互いの仕事を見える化して共有しています。「見える化」というより「元から見えている」と表現したほうが適切かもしれません。私たちは自分の「やったこと、わかったこと、次になること」をどんどんTeamPageに書いて共有しているので、お互いのことがよくわかっていますし、わかっているからこそ信頼し合えています。
お互いの信頼と仕事に対する誠実さがあれば、距離が離れていても時間が違っていてもチームとしてまとまることができる、というのが私の実感です。
リモートワークで使っているツール
それでは、私たちが普段の仕事で使用しているツールをご紹介します。
常時接続はしていない
Webに公開されているリモートワーク事例を読むと、Google ハングアウトやソニックガーデンの Remotty を使っていることが多いようです。オフィスとリモートを常時接続して、お互いの様子が分かるようにしたり、気軽に声がけできるようにしたりする工夫をされているようですね。
私たちのチームでは、メンバーのタイムゾーンが異なることもあって、このような顔が見える形での常時接続はしていません。仕事の成果などはTeamPageに投稿して共有していますが、必ずしも相手がすぐに読むとは限りませんので、急用があるとき(リアルタイムで相手を捕まえて話をしたいとき)は、GoogleハングアウトやFaceTimeの文字チャットまたはビデオ通話で会話をします。
コミュニケーション手段 (1) TeamPage
TeamPageには、複数の「スペース」と呼ばれる「部屋」のようなものをいくつも作ることができ、その部屋ごとに異なる権限、見た目、機能などを設定できます。
例えば、日本での顧客サポートのトピック、マーケティング、会計報告、営業相談などは、上図の「Japan Biz Office」というスペースで行っています。Proteusスキンの開発は「Proteus」スペース、Webサイトからの問い合わせは「Info」スペース、全員が集うチャットは「Live Blog」スペースなど、スペースごとに役割があり、その役割に応じて権限やメンバーを決めています。
グループウェアなど多くのコミュニケーションツールでは、掲示板、チャット、メール、カレンダーなどの「機能」が初めにありますが、TeamPageでは初めに「スペース」があります。スペースの設計次第で、スペースは掲示板にもなればチャットにもなりますし、そのような「機能」を組み合わせることもできます。ここがTeamPageの柔軟な点でもあり、同時に説明の難しい点でもあります。
上図の左側では、お客様との打ち合わせの中で出てきた新機能のアイディアについて、その実現性などを話し合っています。TeamPageには、普通の記事、タスク記事、近況アップデート記事、スケジュール記事など、さまざまな記事の「種類」がありますが、どの種類でも好きな場所にコメントを付けて話を深められるので便利です。
一方、右側は、近況アップデートを使用したチャット型のコミュニケーションです。トップページの「近況」タブには、全員が読み書きできる「Live Blog」スペースへの投稿だけでなく、その他のスペースの近況アップデート記事も、閲覧権限でフィルタリングされて表示されます。
近況アップデート記事にもコメントしたりタスクを登録したりできるのですが、古い情報がどんどん下へ流れていってしまうため、近況アップデートで話を深めることはあまりしていません。その代わり、「今、○○でDave君と新機能について話をしているから、他のみんなもちょっと読んでみて」のように、注意を促す内容を近況アップデートとして投稿をし、本スレッドへ誘導するようにしています。
チャット型のコミュニケーションは即時性があり、便利ですが、私たちは「近況」を常に見ているわけではありません。「近況」は全員に何かを知らせるには適した場所ですが、いつ読むかは相手次第という共通認識があります。
相手に確実に読んで欲しい場合や返事が欲しい場合は、メンションを使って相手に通知を出すか、相手を担当者に指定したタスクを投稿しています。通知はメールでも相手に配信されるので、他の作業を行っていてTeamPageを見ていない場合でも、すぐに気づけます。
下図は、私が報告したバグの修正タスクが完了になったときのメール通知の例です。メールの差出人の名前が「Dave」なので、「あ、Daveが修正してくれたんだな」とすぐに気がつけるというわけです。
私宛のメンションのない投稿や私が担当しないタスクの通知は、私には配信されません。したがって、なかなか気が付きません。このような、私が直接関わっていない話(のうち、私の閲覧権限のあるもの)は、毎朝メール配信されるダイジェストをザッと読んでおおよその動向をつかむようにしています。
メンバーの中には、RSSで特定のトピックの新着を購読している人もいます。RSSのフィードは、スペースやタグごとに作成できるので、特定の種類の新着を定期的にチェックするのに便利です。(例えば、自分が担当している顧客A社とB社の「質問」タグをRSSでチェックする、など)
コミュニケーション手段 (2) Google Hangouts
TeamPageで相手に通知を出しても、相手はすぐに読んでくれないかもしれません。元々、「メールをいつ読むのかは相手次第」という理解があるので、返事が来るまでに1〜2日くらいかかることが多いです。でも、早急に相手を捕まえて話をしたいときもありますよね。
そんなときは、Google ハングアウトでオンライン状態を確認し、まずは「今、5分くらい時間ある?」と文字チャットで話しかけます。そして、必要に応じてビデオ通話に移行します。
話が脱線して5分では収まらないことも多いのですが、なかなか会える機会もないので、久しぶりに友人と会って話すときのように、脱線もまたハッピーなことなのです。気分転換にもなりますし、英会話の経験にもなります。(私以外のチームメンバーは全員米国人で公用語は英語なのです)
下図は、脱線に脱線を重ねて、興味のある音楽ジャンルやYouTubeのお気に入りビデオを紹介し合っている時の会話です。
コミュニケーション手段 (3) iMessage & FaceTime
MacやiPhoneを使っているメンバーとはiMessageやFaceTimeで連絡を取ることもありますが、相手のオンライン状態が画面に表示されないのが難点です。
なので、「○月○日の日本時間の○時からFaceTime会議しよう」のように、予めスケジュールが組まれた打ち合わせに使うことが多いです。
下図は、チームメンバーから突然の誕生日メッセージが届いたときの様子です。
コミュニケーション手段 (4) GoToMeeting
デスクトップ画面の共有やリモート操作が必要な場合は、GoToMeetingを使います。例えば、先日私のMac上に構築されている開発環境に何かトラブルが発生してうまく動作しなくなったとき、私のデスクトップ画面をドイツのエンジニアに公開し、リモート操作してもらって解決しました。相手の都合がついて直接診てもらった方が早い場合には、このように直接診てもらっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ワークスタイルやワークバランスを改善するためのひとつの方法として、昨今、リモートワークやテレワークが注目されています。それと同時に、勤怠管理やコミュニケーションの難しさが課題として指摘されています。このような課題に対して、常時お互いの様子が見えるようにしたり、定期的に集まる機会(オフ会)を設けたりと、さまざまな工夫がなされているようです。
上述のように、弊社では常時接続はしておらず、実際に会う機会も少ないのですが、TeamPageを中心としたコミュニケーション環境でうまく結びついています。
また、私はしばしばわからないことをメンバーに質問し(例えば、英語で書かれた内容の細かな意味を確認するため)、メンバーは丁寧に回答をくれます。誰かとの問答に別のメンバーが入ってくることも少なくありません。逆に、私からは日本での出来事などの情報発信を行い、私も米国のお客様のサポートにも参加しています。このような積極的なやり取りが普段からある結果、常時接続やオフラインでの会合がなくても、メンバー間の意思疎通が図られているのではないかと思います。
リモートワークに興味のある皆さんの参考になれば幸いです。
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